代替行動の指導ー不適切な行動に置き換わるもの

子どもが示す減らしたい困った行動(不適切な行動)には、必ず理由があります。その理由のことを「機能」と言います。そして、その機能を探って突き止めることを「機能分析」とか「機能的アセスメント」と言います。「機能的アセスメント」については別項で詳しく解説しますが、不適切な行動の機能にはそれを行なった結果から見て、概ね次の6つのものがあると言われています。

⑴ 不適切な行動をした結果、あるものを得ている(正の強化)。
 ① 他者からの注目を得ている:「もっと私のこと見て」
 ② 物や活動を得ている:「◯◯がほしい」「◯◯がしてみたい」
 ③ 感覚を得ている:「◯◯が心地いい」
⑵ 不適切な行動をした結果、あるものから逃れている(負の強化)。
 ④ 他者からの注目から逃れる:「私にかまわないでほしい」
 ⑤ 物や活動から逃れる:「◯◯を出さないでほしい」「◯◯をしたくない」
 ⑥ 感覚から逃れる:「◯◯が嫌だ」「◯◯を忘れたい」

不適切な行動をなくす(減らす)効果的な方法はその行動の機能を見極めて、「それと同じ機能を果たすが受け入れられる行動」に置き換えることです。こういう代替行動のことを「機能的に等価な代替行動」と言います。

ここで一つ、機能的に等価な代替行動を教えていった結果、うまくいった事例をお話しします。

高等部1年生のB君は、教室の掃除用具ロッカーに入り込むという不適切な行動が多い生徒でした。その行動は、何もすることがない暇な状況で特によく起こすようでした。ロッカーに入り込むと、何かブツブツ言っていたり鼻歌を歌っていることが多いのです。

そこでまず取り組んだことは、これまで好き勝手に入り込める状況だったのを、「きゅうけい」カードを担任に渡さないと入れない、逆に言うとカードを渡せば入ることを許可されるというルールに変え、そのルールを厳格に徹底したのです。

次にこのルールが定着したことを見定めてから、一日に使えるカードの枚数を徐々に減らしていきました。最初は10枚使えたのを、二週間かけて5枚にまで減らしていったのですが、それに伴い順調にその制限枚数に収まるように入り込む回数と総時間数が減っていきました。

さらに暇な時間をできるだけ減らすために、iPadでYouTubeの動画を見ることに誘導しました。B君は昔懐かしい「東京フレンドパーク」を見ることがお気に入りなのですが、iPadを手の届かない棚の中にしまっておくとそこを指差して、「フレンドパーク!」と一語文で要求するようになりました。そこでさらに欲張って、「フレンドパーク、見せてください」というニ語文で言うように教えていったところ、それも定着しました。

そうこうしているうちに、今ではロッカーに入り込むことは全くなくなりました。

このように、ロッカーに入るためにはカードを渡さないと入れない、しかしカードを渡せば入ることを許可されるという一つ目の代替行動の指導、暇で何もすることがない状況の代わりに、要求すればiPadで動画が見れるという二つ目の代替行動の指導が相まって、効果的に行動問題を減らすことができました。

罰(正の弱化)を使わなくともスマートに不適切な行動を減らすことができたという点で、PBS(ポジティブ行動支援)の一環とも言える成功事例でしょう。